■ みなかみ紀行 四万温泉

Print Friendly

KC460077
大正11年10月20日、若山牧水は未明に起きてランプの下で朝食をとり、未だ薄暗いなか花敷温泉を出発します。路傍には昨夜の雪がまばらに残っています。
「かみつけと越後の国のさかひなる峰の高きに雪降りにけり」
峠をこえて沢渡温泉に着き、ここから四万へ廻るか伊香保へ出るか迷った挙句に四万温泉へ向かいます。

“私は此処で順序として四万温泉のことを書かねばならぬことを不快に思ふ”、みなかみ紀行で有名な件が始まります。
馬車を降りた牧水一行を、迎えたのはT旅館の男衆でした。一泊と聞くや途端に存在な態度に豹変し、傍らの小僧に粗末な部屋へ案内させます。またこの小僧が痴れ者で、料理の前金を要求し牧水の怒りを増幅させます。
“旅と言えば楽しいもの有難いものと思い込んでいる私は、出来るだけその心を味わいたいため、不自由の中から多少の心づけを渡さずに出たことはないのだが・・・”

滅多に怒りを露わにしない牧水ですが、流石に腹に据えかねた様です。

牧水が訪れた温泉旅館のHPには、大なり小なり彼との関わりについてのコメントが誇らしげに掲載されていますが、流石にT旅館のそれには見当たりませんでした。

今回私たちの宿泊は、四万やまぐち館でした。南無妙法蓮華経と刻まれた大岩が有る露店風呂や、昔ながらの湯治場の風情が漂う薬師の湯が有名ですが、とりわけ名物女将で知られています。評論家の桜井良子さん似の美人で、見るからに賢そうな方ですが、兎に角そのサービス精神には圧倒されます。やまぐち館にはリピーターが多いと言うのも頷けます。

関連記事: