■ みなかみ紀行 老神温泉

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うだる様な暑さから解放され一気に秋めいた気候になった。周五郎のヴァン(山本周五郎がお気に入りだった勝沼ワインで、多少甘口である)を飲みつつHP記事を乍書きして、終わったらさっさと早引けする。自営業の特権だ。

「白玉の歯に染み透る秋の夜の、酒は静かに飲むべかりけり」

今回は鄙びた温泉のご紹介をしたい。関越道沼田ICを下り、日光ロマンチック街道を走ること30分、山中に小振りな温泉街が現れる。決してメジャーではないが、老神温泉と風変わりな名称に心惹かれる。遥か昔に日光の神様と戦をして傷を負った赤城の神様が、偶々湧き出る温泉を見つけたとの由来がある。片品川沿いの渓谷に在り、夏は絶好の避暑地だが冬はアクセスに難儀しそうだ。近くに吹割の滝が有り、包み込む様な一面の紅葉に圧倒される。

今回のお宿は、牧水苑である。その名の通り歌人若山牧水ゆかりの宿で、
「かみつけのとね乃郡代老神の、時雨ふる朝を別れゆくなり」
と詠んだ短冊が残されている。

宿の周囲には騒がしい施設などなく、お気に入りの本など1-2冊持ち込んで、まったり時を過ごすのが上策だ。やや熱めの湯で、総檜造りの内湯と岩風呂は野趣に溢れる。神経痛やウマチに効用があるそうな。食事は、地元で捕れた岩名や山女の姿造り、赤城牛の鉄板焼きなどが出てきた。大層美味であった。

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