■ 京都・東寺

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新幹線が京都駅のホームを離れると、間もなく南西方向に五重塔が見えます。
東寺真言宗の総本山、教王護国寺です。創建は今から1200年前、平安遷都に伴い朱雀大路の南詰めに、西寺と対で官寺として建立されました。その後、嵯峨天皇から空海に与えられ、真言密教の根本道場として整備されました。数少ない旧平安京の遺構の一つです。

20年の留学期間を、独断で短縮した闕期(けつご)の罪により、空海は長らく太宰府に留め置かれました。漸く入京を許され、東寺を賜りましたが、更に真言密教の教えを広めるため、その世界観を表す曼荼羅をビジュアルに具現化する目的で、講堂に須弥壇を作ります。一般には、東寺講堂の立体曼荼羅と呼ばれています。

どの案内書や美術書を見ても、一歩講堂内部に足を踏み入れると、その威容に圧倒されると書いて有ります。将にその通りで誇張はありません。
正面には大日如来を中尊に五佛、左側は不動を中尊に五大明王、そして右側は金剛波羅蜜多を中尊に五大菩薩が安置されています。この3群15体を囲む形で、護法神六体が配されています。仏教美術として個人的に感銘を受けるのは、護法神のうち増長天と多聞天です。

仏法の守護神で五穀豊穣を司るとされる増長天は、長い槍と刀を持ち、邪気を踏み付けながら憤怒の形相を見せています。分厚い胸板に太い手足、味方であれば如何にも心強い神です。
多聞天は財宝・蓄財の神として崇められています。毘沙門天とも呼ばれますが、他の天王像が邪気を踏みつけているのに対して、多聞天は邪気を従え、邪気に支えられています。宝塔を高く掲げ金剛棒を手にしたその姿は、知恵と力を兼ね備えた神を彷彿させます。

真言密教は、当時の最先端技術である加持祈祷を宗教儀式の中心に置き、天皇や国家に危険を晒す怨霊の鎮魂や、雨乞いに霊験があったことで朝廷の信任を得ました。空海は宗教や言語以外に、土木や芸術にも通じています。立体曼荼羅は、空海が唐より持ち帰った図像を基に、仏師を指導して前例のない仏像群を完成させたものです。これ程の異形をした仏像の出現は、さぞや当時の人々を驚かせたに相違ありません。
知力・体力に加えて、政治力や指導力にも秀でたものが有り、今更ながらその万能には感嘆させられます。
残念ながら、立体曼荼羅は映像でご紹介することが出来ませんので、是非一度現地にお出かけ下さい。

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