■ 湯西川温泉 花と華

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少し早目の夏休みと嫁さんの慰労を兼ね、湯西川温泉に出掛けた。今市インターで高速道路を下り、会津西街道を北上すること小一時間で五十里湖に出る。絶景として知られる野岩鉄道の湖上橋手前を西に折れ、ダム湖沿いの路を更に山奥へ進むと、やがて湯西川の里に着く。今でこそトンネルや高架橋が整備されているが、會ては相当の難路であったろうことが想像に難くない。
湯西川は平重盛の子孫が壇の浦の戦いに敗れた後、縁者を頼って関東に逃れ、辿り着いた深山の隠れ里である。豊富に湧出する温泉の歴史は古く、既に江戸初期には湯治宿が開かれていたと聞く。多くの温泉地が経営的に疲弊しているなか、街全体の佇まいを見るだけでキャッシュフローの好調さが窺える。寂れた射的場や一杯飲み屋の類は眼にしない。中心部には築浅の洒落た建造物が並び、山里ならではのイベントが頻繁に開催される由で、さすれば客が集まるのも自然の理であろう。行政主導の発案らしいが、平家と温泉をキャッチコピーにして、限られた予算を効率的に活用した過疎の地域興しの成功事例と言われる。
湯西川は以前に訪れたことがあるが、何時だったか定かでない。若年のため体力はあるが余り金のない時期で、温泉街をざっと見ただけで早々に引上げた記憶がある。このトラウマが、無意識に再訪した伏線になっているのだろうか。
今回泊まった宿は花と華である。手入れの行き届いた施設で、就中部屋からの眺望と露天風呂が良い。眼下を湯西川が流れ、これに傾れこむ様に急峻な新緑の斜面が聳える。中空を鳥や蝶が飛び交い、ベランダ越しの景観は然ながらピクチャーウインドウの如き風情で見飽きない。
食事に付いて触れぬと不味いのかと誤解を受けそうだが、繰返し釈明している通り小職は食レポが苦手である。夕食は囲炉裏を囲む、川魚や山菜、肉が主体のコースを頼んだ。花と華は元々味噌屋を営んでいたので、今でも味噌を自家製造・消費・販売している。珍しく麦麹を使った発酵で、ネギ味噌にするとご飯のおかずにもなる。これを炉端で火にあぶり、イワナや栃木牛の焼物に塗すと酒が進む。山菜やコンニャクも程好い塩加減で美味い。

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