期限後申告による還付請求可能期間に注意 ー5年後の3月15日には請求権が失効しています

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現在進行形の事案です。依頼者は商社にお勤めの方で、NY在勤中に賃貸用マンションを購入され、5年前に帰国後も賃貸を継続して居られます。この不動産所得に就いては、米国側で適正に申告しているものの日本では無申告です。因みに直近3年分は給与収入が2千万円超になったため確定申告書を提出していますが、この中に不動産所得は含まれていません。国外財産調書も未提出です。米国の不動産市況は今がピークと見て、年内の売却を考えて居られます。そうすると、来年の確定申告では譲渡所得の他に、過去5年間の不動産所得申告漏れを指摘される懸念がある為、ご相談に来られたものです。なお依頼者は国税還付請求権が5年で失効されることはご存じで、今年分の確定申告と過年度5年分の期限後申告(修正申告又は更正の請求)を併せて、来年3月15日迄に実施したいとのご意向です。

ざっと計算した処では、この方の当初2年分の日本の不動産所得は赤字です。もしアメリカで連邦税・NY州税の納付が有れば外国税額控除の適用が受けられます。従って確定申告をすれば所得税が還付されることになります。住民税には国税と異なり還付制度が有りませんので、次年度の税額が軽減されます。
確定申告義務がない方でも、給与等で源泉徴収された税額が不動産所得の赤字との損益通算等に因り過大となった場合は確定申告(還付申告)をすることが出来ます。勿論還付申告をしなくても良いのですが、還付請求権をむざむざ放棄する方など居られません。一方年末調整ファイナルではなく、確定申告をされた方が何らかの理由で納付済所得税額が過大となり、還付を受ける為の手続きが更正の請求です。これも還付申告と同様に、やるやらないは納税者の任意です。提出書類のnamingや様式が異なるだけで、還付目的での意味合いは同じ思われるかも知れませんが、両者には重要な相違があります。ご存知のように、税務調査などでの所得税の増額更正は5年を経過すると出来ません。逆に確定申告後に過大納付となった場合の更正の請求が出来る期間も同じです。これ等の起算点は当該年分の法定申告期限です。但し判決等の後発的理由により税額増減が生じた場合や更正等が有った場合は、当該事実が生じた日の翌日から2ヶ月以内が還付請求可能期間になります。
一方還付申告ですが、上述の通り申告するしないは納税者の任意ですから、法定申告期限と言うものがありません。この場合は、国税通則法第74条の規定に拠り、その年の翌年1月1日が起算日とされます。ご依頼者のケースですと、平成29年(2017)分の還付申告書を令和5年1月1日以降に提出した場合は、還付請求が認められません。実際に他事案でもその様な不都合が発生したことがあるため注意が必要です。

 
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