海外不動産に係る相続税の申告漏れが多い様です。ところで海外不動産の相続税評価額はどう算定すれば良いのでしょうか。また小規模宅地等の特例に拠る評価減は認められるのでしょうか。今回はこの辺りに付いてご説明します。
1.海外不動産の相続税評価額
財産評価基本通達に示された宅地等の評価方法ですが、①路線ごとに付された路線価を基に奥行補正率等の画地調整をした価額に拠り評価する、又は ②固定資産税評価額に地域ごとに定められた倍率を乗じた価額に拠り評価する のが原則です。家屋の評価方法は、固定資産税評価額に倍率1を乗じた価額に拠り評価することとされています。然しながら海外不動産には路線価や固定資産税評価額に相当するものが存在しません。そこで通達5-2(国外財産の評価)では、” 国外にある財産の価額についても、この通達に定める評価方法により評価することに留意する。なおこの通達によって評価することが出来ない財産については、この通達に定める評価方法に準じて、又は売買実例価額、精通者意見価格等を斟酌して評価するものとする” と定めています。
では具体的にどうすれば良いのでしょうか。幣事務所では、現地の不動産鑑定士や金融機関による簡易な鑑定書(appraisal)の取付をお薦めしています。多少費用は掛かりますが、高額物件であれば通達通りに対処して無用の税務リスクを避けるのが賢明だと思います。
物件の取得価額が分っている場合は、これから算定することも考えられます。同通達の注記には、” この通達の定めによって評価することが出来ない財産に付いては、課税上弊害が無い限り、その財産の取得価額を基にその財産が所在する地域若しくは国におけるその財産と同一種類の財産の一般的な価格動向に基づき時点修正して求めた価額 又は課税時期後にその財産を譲渡した場合における譲渡価額を基に課税時期現在の価額として算出した価額により評価することができる ” と書かれています。
概念としては分かるのですが、良く読むと価格動向に様々な条件が付されています。全ての条件を満たした公的な地価変動指数を入手するのは、容易ではなさそうです。加えて保有期間中の為替変動や減価償却費を調整する必要があるため、かなり面倒な計算になります。
2.海外に在る小規模宅地等の特例の適用可否
小規模宅地等の特例の適用対象となる宅地等について、法令(措置法第69条の4)には所在地に関する制限がありません。要件を満たせば海外不動産であっても適用が受けられます。尤も特定居住用宅地等や特定事業用宅地等に付いては該当するケースが然程多くない筈なので、大部分は貸付事業用宅地等になろうかと思われます。
3.被相続人又は相続人が非居住者であった場合の小規模宅地等の特例の適用可否
被相続人又は相続人が非居住者であっても、要件を満たせば居住者と同様に特例の適用が可能です。但し被相続人の居住の用に供されていた宅地等を、所謂「家なき子」に該当する親族が取得する場合は、日本国籍の有無が問題になります。親族が日本国内に住所を有していない場合、摘要を受けるには日本国籍を有していることが必要です。日本国籍を注していない場合は適用が受けられません。
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