先日全国紙に、「家賃保証トラブル多発」「30年保証/破られた口約束」との見出しで、サブリース(業者の一括借入)による30年家賃保証に魅かれてアパート経営に乗り出した大家から、トラブルの訴えが相次いでいるとの記事が掲載されました。国土交通省はこれまで、大家も事業者なので一般消費者並みの保護は不要との立場でしたが、紛議が止まぬため登録制度を改正し、業者に賃料減額の可能性や解約リスク等についての説明義務を課すことにしました。それでもこの措置の効果を疑問視する声があります。20~49歳のアパート入居者人口の大幅減少が見込まれる平成7年以降は、更に厳しい状況に陥ることが懸念されています。
訴えの内容ですが、何れも①築後年数の経過や近隣物件との競合で空室が増えたため、サブリース会社から家賃の引き下げを要求された、②収支計画が厳しくなるので難色を示すと、中途解約条項を持ち出された、③入居者募集や物件管理の実務はサブリース会社がやっているので、本当に手を引かれるとお手上げになる、と言うもので略々共通しています。
”家賃が下がるとの説明がなかった” ”節税対策や資産運用メリットがあると言われた” ”知識不足でプロである業者の言うが儘にされた” と言った憤懣とも愚痴ともつかぬ声が家主から寄せられていますが、残念ながら法的に業者と争う余地はありません。何故かと言えば、契約書に業者が主張する家賃改訂や中途解約に関する条項が明記されているからです。業者側は弁護士事務所を起用し、事前に法的検討を行って居ますので、その点抜かりはありません。読者への受け狙いでしょうか、”纏まった広さの土地を有する、世間知らずでプライドが高く、人に相談しそうにない一定の職種の方をターゲットに営業を掛けた” との元営業マンの裏話も有ります。
確かにプレハブメーカー等の営業姿勢は感心しません。メリットを誇張気味に喧伝する一方で、不都合な話はしないからです。然しながら、長期家賃保証が抱える潜在的リスクについては、弁護士・税理士などの専門家が繰り返し注意喚起を行って参りました。零細事業者と言えども、多額のアパート投資を行う以上は、相応に契約内容の理解やリスク分析を行うことが必要です。知らなかったでは済まされません。
プレハブメーカー等は、建築の請負契約で必要利益を充分に確保しています。撒き餌としての長期家賃保証では、最終的なアパート経営のリスクを家主側に転嫁するのが当然なのです。漠然とその辺りの事情が分かりつつも、根拠のない楽観的な見通しに立ち家賃保証スキームを利用される限り問題はなくなりません。今回の改正も、国土交通省への登録制度参加業者を対象にした説明義務の付与で、全体の1割に過ぎませんので、措置の効果を疑問視する声が有ると申し上げた次第です。
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