居住用と事業用に併用されている共有不動産を譲渡した場合の3千万特別控除

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今シーズンも共有不動産売却に伴う税務申告のご依頼が何件か有りました。親子で共有しているが親世帯(又は子世帯)だけが住んでいるケースとか、相続で兄弟が取得したが長期間空き家になっているケース等、3千万円特別控除の適用については議論の余地がない事例が殆んどでした。

ところが判断に迷うのは、一棟の建物のうちに共有権者の居住用に供されている部分と、他の共有権者の事業の用に供されている部分がある場合です。
仮に一棟の土地・建物を兄弟AとB(生計不同一)が持分2分の1で共有し、床面積の2分の1相当はAが自己の居住用に・2分の1はBが事業用店舗に使用していたとします。全体の売却収入は1億5千万円で、これから取得費・譲渡経費を引いた譲渡利益は6千万円です。これをAとBで折半します。

この場合Aの確定申告に於ける居住用財産の特別控除額は、3千万円(6千万円×1/2×100%)でしょうか或いは1千5百万円(6千万円×1/2×50%)でしょうか?換言すれば、当該店舗併用住宅に於けるAの居住用・非居住用の割合を、分母の内Aが使用する居住用部分の面積/Aが使用する建物(土地)部分の面積で求めるのか、分母の内Aが使用する居住用部分の面積/建物(土地)の全体面積で求めるのかと言う疑問です。前者であれば納税額が有りませんが、後者だと課税所得が生じる上に軽課税率ではなく一般税率が適用されます。

結論から言えば、前者になります。施行令には、”個人がその居住の用に供している家屋(当該家屋のうちにその居住の用以外の用に供している部分があるときは・・)とありますので、分母にはAの用に供されていない部分が含まれません。従ってこのケースでは、Aの居住用割合は100%となり3千万円全額の特別控除が受けられます。
何故この様な取扱いになるのかは、マンションの売却を考えれば理解し易いと思います。マンションの権利関係ですが、建物は専有部分が区分所有権・共用部分は共有持分権、土地は建物所有割合に応じた敷地利用権です。もし特別控除額の計算を後者で行うとすれば、マンション居住者に付いては3千万円控除の優遇措置が殆んど機能しなくなります。

経済合理性から考えれば、共有の場合は使用する共有持分の範囲で居住用・非居住用の割合を計算するのが妥当と思いますが、その辺りが明確に読み切れない条文の書き振りになっているのも確かです。
例えば上記設例で、店舗部分をBではなくAが経営している場合はどうでしょうか?Aの事業の用に供されているのだから単純に居住用割合は50%なのか、Bが持分をAに貸借しているのだからBの用に供されていると考えて居住用割合は100%なのか、判断が微妙です。

<関係法令と通達>

1.(居住用財産の譲渡所得の特別控除)
   措置法施行令第23条第1項
   ”第二十条の三第2項の規定は、法三十五条第1項に規定する政令で定める家屋について準用する”
2.(居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の特例)
   措置法施行令第二十条の三第2項
   ”法三十一条の三第2項第一号に規定する政令で定める家屋は、個人がその居住の用に供している家屋(当該家屋のうちにその居住の用以外の用に供している部分があるときは、その居住の用に供している部分に限る)とし、以下省略”
3.(店舗兼併用住宅等の居住部分の判定)
   措置法通達31の3-7
   ”その居住の用に供している家屋のうちに居住の用以外の用に供されている部分のある家屋に係る措置法施行令第20条の3第2項に規定するその居住の用に供している部分及び当該家屋の敷地の用に供されている土地等のうちその居住の用に供している部分は、次により判定するものとする。”
   ①当該家屋のうちその居住の用に供している部分は、次の算式により計算した面積に相当する部分とする
     当該家屋のうちその居住の用に供している部分=A+BXA/(A+C) 
   ②当該土地等のうちその居住の用に供している部分は、次の算式により計算した面積に相当する部分とする
     当該土地等のうちその居住の用に供している部分=A+BX①で算出した床面積/(A+B+C)
   A:当該家屋(土地)の内その居住の用に専ら供している部分の面積 
   B:当該家屋(土地)のうちその居住の用と居住の用以外の用とに併用されている部分の面積
   C:当該家屋(土地)のうち居住の用以外の用に専ら供されている部分の面積
(お断り)
本稿には筆者私見に属する部分が有ります。
 
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