遺留分を良く考慮して遺言書を作成しないと後々揉め事の原因になる

Print Friendly, PDF & Email

遺言書を作るには、遺留分を考慮しなければならないと言うのは皆さん良くご存知でしょう。
ところが実際に遺留分を計算するとなると結構大変です。理由は3つあります。
①相続財産の他に、遺贈財産ゃ生前贈与などの特別受益額を全て反映する必要があること。この中には、対象となる財産と対象外の財産があること。
②遺留分の計算を行う基となる財産の価額は、相続税評価額ではなく時価であること。
③遺言書作成から相続までに、必ず財産の増加・現象が生じるが、予めこの調整スキームを考えて置く必要があること。

それでは、つい最近遺言書の作成依頼を受けた事例を基にご説明しましょう。
ご相談者のお母様は、都内に複数の賃貸マンションや貸宅地を所有するかなりの資産家です。小規模宅地等の特例をフルに使っても、過重な相続税が発生する見込みです。
法手相続人はご相談者と弟さんの2人です。ご相談者は出来るだけ自分の取り分を多くしたいとお考えです。お母様は大分迷った様ですが、体調が優れず何時相続が発生してもおかしくない状況にあるため、ご相談者の提案を承諾されたと言う経緯が有ります。

第一のアドバイスは、遺言の方式についてです。お金と手間は掛かりますが、後日の紛議を避けるためには公正証書遺言がベストです。ただし今回はお母様に、それだけの体力が有りませんので、緊急避難的に自筆証書遺言としました。今後お母様の体力が回復すれば、遺言書の書き直し或いは公正証書遺言への変更が可能です。

速やかに遺言書を作るのが喫緊の課題ですから、詳細に書き込まなければならないものを除き、極力簡単な文章に纏める工夫が必要です。そこで、冒頭で弟さんへの遺贈財産を限定列挙し、次に“前条に記載のない全ての相続財産(負債を含む)は長男に相続または承継させる”と言う文章構成にしました。弟さんへの遺贈財産も、不動産は登記簿通り書く必要が有りますが、銀行預金は、銀行及び支店名・預金種類・口座番号など個別の記載を省き、“XX銀行○○支店遺言者名義の全ての定期預金”と一括表記します。そうすれば、省略化に加え、口座の解約や新規開設による遺留分の金額調整が可能になります。

第二のアドバイスは、正確な遺留分の金額計算です。
遺留分の計算の基となる「相続開始時における相続財産の価額」は時価により評価します。相続税評価額(例えば路線価)ではなく、ましてや小規模宅地等の特例の適用を受けた後の金額ではありません。これから承継した債務の額を控除します。
間違えやすいのが、一定の生前贈与財産を相続財産に加算しなければならない点です。注意しましょう。

第三のアドバイスは、宅地について小規模宅地の特例の適用が受けられる場合、最大限のメリットを享受できる遺産分割の組合せを考えることです。先般の税制改正で、適用要件や、特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等が有る場合の面積制限の計算が、一層複雑になりました。
手前味噌になりますが、遺言書の作成においては、単なる法形式のチエックのみならず、第二・第三の税務的なチエックが出来る専門知識が不可欠です。

*本記事に関する質問や相談をご希望の方は、お電話又はホームの「ご質問/お問い合せ」を利用してご連絡下さい。
*申告その他の実務をご希望の方は、ホームの「料金のご案内」をご参照下さいます様お願い申し上げます。

関連記事: