想定外のリスクがあるため慎重な検討が必要な3つの相続税対策

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別稿の「お薦め出来る3つの相続税対策」には共通点があります。資金の流出が無い、又はあっても親族間の移動に過ぎない、若しくは支出した金額以上の回収が契約上確定していることです。税務の取扱いが変更されるリスクも限定されています。

これに対し、賃貸不動産への投資や、価格変動がある資産への買換え等については、リスクが有ります。どの様なリスクか、発生の確率はどの程度か、これ等を事前に検討しなければなりません。また節税メリットの金額と、リスクに晒される金額とのバランスも重要です。

1.賃貸マンションやアパート建設、二世帯住宅

賃貸マンションやアパート建設を相続税対策として考えるなら、自宅以外の敷地の有効利用に限定される筈です。特定居住用宅地等の面積制限は100坪有りますので、この範囲内の自宅であれば80%の評価減が受けられます。態々自宅敷地を賃貸住宅との併用にして、評価減割合を下げる必要は有りません。所有不動産の収益化として建設するのであれば理解できますが、その場合には相続税対策云々を標榜するのも可笑しな話です。

賃貸住宅を建てる場合は、収支計画を保守的に立てる必要があります。特に建設費を借入金で賄う場合は、要注意です。今後更に少子高齢化が進み、賃貸住宅市場は供給過剰状態が続くと予想されています。不動産価額も、2020年以降は不透明です。
長期家賃保証については、将来利回りの保証でないことが認識される様になりましたが、紙面の都合より割愛します。

次に節税額と建設資金とのバランスについてです。仮に100坪(相続税評価額120百万円)の所有土地に2億円で賃貸マンションを建設するとします。そうすると、土地の評価減は120百万円X(70%×30%)=25百万円、建物の評価減は200百万円X(40%+60%×30%)=116百万円になります。限界税率を30%とすれば、節税額は42百万円です。このために支出するリスクマネーが2億円では、如何にもバランスが悪いと思いませんか?

二世帯住宅ですが、親世帯住宅を二世帯住宅に建て替えたからと言って、小規模宅地等の取扱いが有利になる訳では有りません。先の改正では、構造上区分のある1棟の二世帯住宅に別々に居住している場合であっても、全体を特例対象とすることになっただけのことです。
二世帯住宅では、親世帯が亡くなった後にどう利用するかが問題になります。賃貸するか売却するかの2者択一ですが、売却の場合は特殊な構造なので購入者が限られることが懸念されます。

.一戸建てからタワーマンション等への住替え

現在の処は、税務上有利な点が多いのではないかと思います。
ご存知の通り、タワーマンションの高層階は相続税評価額が割安になります。同じ時価の不動産であれば、一戸建てよりはタワーマンションの方が相続税評価額が低くなります。老後の不動産管理や居住の利便性を考えても、集合住宅の方が勝っています。
相続税の他に、所得税(不動産譲渡所得)負担も、親の存命中に含み益のある一戸建てを処分した方が少なくて済みます。子が相続した後に古家を売却しても、3千万円特別控除や軽減税率の適用は受けられません。
好いこと尽くめの様ですが、気になるのはブームの過熱で価額が割高になっている点です。不動産市況が下落に転じた場合は、一戸建てよりも変動幅が大きくなる懸念があります。当局による節税封じも考慮しなければなりません。時価と相続税評価額の乖離が、明らかに課税上の弊害を齎している場合は、評価方法を見直すことも考えられます。この他に地震のリスクや老朽化の問題があります。耐震構造・免震構造と言っても実際に大規模地震で実証された訳ではありません。また杭打ち工事の手抜きなど想定外の問題も出てきました。建て直しが難しいだけに一旦不安視されると、資産価値の大幅目減りの可能性も否定できません。

3.不動産の負担付贈与

これは絶対にやってはいけません。贈与財産の評価は相続財産の評価と同じです。従って不動産については、土地は路線価、建物は固定資産税評価額に拠り評価します。そうすると一般には時価よりもかなり低い評価になります。
かって不動産の評価額と同額の負債を負わせて(例えば住宅ローン残高の一部の債務承継)、差引の課税価格を基礎控除以下に抑え、無税で子に財産を移転すると言う租税回避行為が横行しました。
これに対し、平成元年に発遣された「負担付贈与通達」で、次の様な節税封じが行われています。
①この場合の課税価格は、贈与された財産が土地や借地権などである場合及び家屋や構築物などである場合には、その贈与の時における通常の取引価額に相当する金額から負担額を控除した価額による。
②また、贈与された財産が上記の財産以外のものである場合は、その財産の相続税評価額から負担額を控除した価額とする。
③なお、負担付贈与があった場合においてその負担額が第三者の利益に帰すときは、第三者は負担額に相当する金額を贈与により取得したことになる。

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