海外赴任で自宅を法人に賃貸されている方は、日本で不動産所得の確定申告をしないと損をします

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転勤シーズンを迎えました。海外勤務の辞令を受け、家族帯同で赴任される方も居られるでしょう。空き家では建物が痛むし住宅ローンの返済もあるため、自宅を賃貸に出される方が殆んどだと思います。そうすると非居住者の課税対象となる不動産所得が発生するため、確定申告をどうするか悩むことになります。因みに非居住者が直接に申告・納付等の行為をすることは出来ません。納税管理人を選任する必要があります。
この不動産所得を日本で申告する必要があるかどうかですが、恒久的施設(P/E)保有の有無に関わらず、総合課税として申告しなければなりません。
一方、賃借人には源泉徴収義務が課せられています。法人の賃借の場合は須らく源泉徴収をしなければなりません。個人も同様ですが、自己又はその親族の居住の用に供するための賃借に限り源泉徴収をする必要がありません.従って殆どのケースは源泉徴収不要と言うことになります。ここで注意を喚起したいのが、法人への賃貸で、収入金額の20.42%が源泉徴収されているケースです。余程の特殊事情でもない限り、不動産所得の金額が賃貸収入の20%余を超えることはありません。つまり多くの場合に、確定申告をすれば過納税額が戻って来ると言うことになります。これを看過して還付請求権が期限切れで失効するケースを数多く目にしますが、実に勿体ない話です。
それではどの程度の過納税額が発生するか設例でご説明しましょう。7年前に7千万円で購入(住宅ローン5千万円)した新築マンションを海外転勤のため賃貸していると仮定します。
①賃貸料収入  :300,000円x12=3,600,000円
②減価償却費  :70,000,000円xうち家屋60%x0.022=924,000円
③支払利息   :45,000,000円x1.5%=675,000円
④固定資産税  :           180,000円
⑤物件管理費ほか:           600,000円
⑥所得税額等  :(3,600,000-2,379,000-480,000)x5%x1.021=37,800円

法人への賃貸であれば735,120円(賃貸料収入の20.42%相当)が源泉徴収されていますので、確定申告に拠る納付税額との差額607,320円が還付されることになります。冒頭申し上げた通り確定申告の必要がありますが、縦しんばしなくても税務署からすると却って有難いと言う妙な話になります。通算赴任期間を5年とすればトータルで3百万円程の還付になりますので、放って置く手はありません。因みに期限後申告に由り還付請求が出来る期間は、確定申告期限から5年(正確には譲渡年の5年後の12月31日)以内に限られています。
この他の留意点としては、非居住者が日本で確定申告をするためには納税管理人の選任が必要になります。納税管理人が重畳的に納税義務を負うことはないとされていますが、それなりのリスクと手間が発生しますので誰でもと言う訳には行きません。申告書を作成する税理士が就任するのが一般的です

海外赴任前に住宅ローン控除を受けていた場合の対応はどうすれば良いでしょうか。海外赴任中は自己が居住していない訳ですから、当然住宅ローン控除の適用はありません。出国前に「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」を提出しておけば、その事由が解消して再居住した場合に、住宅ローン控除の再適用が認められます。再居住の日の属する年に賃貸していた場合は、その年の翌年以降から再適用が認められます。上記事例ですと、控除期間10年のうち既に7年が経過していますので、3年後に帰任した場合は残念ながら適用可能な年分がありません。

将来的に当該マンションを売却した場合への影響です。譲渡所得金額の計算上、建物の取得費は取得価額から償却費相当額を控除して算出します。この場合に賃貸期間中の償却費相当額は、法定耐用年数に応じた償却率(設例では47年の0.022)を用いて計算しますが、自己の居住期間であれば47年x1.5=70年の旧定額法償却率0.015を適用します。この結果、賃貸期間中の償却費相当額が自己居住期間のそれと比較して多くなりますので、譲渡所得金額が増えることに御留意下さい。これを無視して譲渡所得の申告をすると税務署から否認されます。

 
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