仮に後者に該当する場合に、申告要否検討表を提出しなければどうなるでしょうか?提出義務がある訳ではないので、不提出に因り罰則を受けることはありませんが、後日に税務署から提出を促す連絡が来ると思います。もし主張と異なり、遺産総額が基礎控除額を超える様であれば当局の心証はかなり悪くなります。ご面倒でも、専門家にチエックを依頼し、申告又は要否検討表提出の何れかで対応されることをお薦めします。
平成27年からの相続税の課税ベース拡大に伴い、税務当局は適正申告推進の見地より、相続税の課税が見込まれる者に対して「相続税の申告案内」の送致を行っています。遺産総額が基礎控除内に納まれば「相続税の申告書」の提出は不要ですが、その場合でも申告の要否を税務署が確認するために、被相続人の財産等を記載した「相続税の申告要否検討表」の提出が勧奨されています。送付の時期ですが、相続税の申告期限の4か月前が目途とされています。税務署では送付対象者を一覧表に纏めて管理し、申告期限が過ぎても「相続税の申告書」または「相続税の申告要否検討表」の何れも出ていない場合には、調査が行われる可能性が有ります。この結果、申告不要との結論になれば良いのですが、期限後申告或いは決定処分が必要となれば、無申告加算税や延滞税の問題が生じます。申告要否検討表に意図的に虚偽の記載をして課税を免れようとしたと認定される場合は、重加算税の適用も考えられます。
「相続税の申告案内」の送致先ですが、KSKシステムから被相続人の保有財産見込額や所得申告状況を基準に抽出されます。KSKシステムとは、国税総合管理システムの頭文字を取ったもので、全国の12国税局と524税務署をネットワークで結び、申告納税の実績や各種情報を一元的に管理するシステムです。抽出基準は不明ですが、適宜見直される様です。
死亡届が提出された者の中から、機械的に対象者が抽出され事後の管理が行われますので、無視しても結局は調査されることになります。申告実績その他から相続税の申告対象となる蓋然性が高いと判定された訳ですから、無視して逃げ通すのは困難です。そうすると「相続税の申告案内」が送付されて来なければ、税務署は申告の必要なしと見ているのではと考えられる方も居られるでしょうが、高を括らず適正に申告又は資料提出をするのが無難です。
(ご参考)
国税庁が公表した平成30年分の相続税の申告事績にあった事例です。
被相続人名義の預金口座の入出金代理を行っていた相続人Aは、相続開始後に税務署から送られてきたお尋ねに対し「相続財産は基礎控除額以下である」との回答を提出しました。無申告のところ実地調査が入り、自宅に多額の現金を保有していたことが発覚しました。、増差課税価格2億円、追徴税額65百万円の更正が行われ、当然ながら重加算税が適用されました。
「相続税の申告案内」ではなく「相続税についてのお知らせ」が税務署から送られてくる場合があります。前者はKSKシステムで一定の抽出基準に該当する事案について取られる措置ですが、後者は抽出基準には該当しないが、相続税の申告義務が生じる可能性がある事案について送致されます。受取った相続人が申告の要否を自主チェックすることを目的にしていますので、特段の書類提出は求められていません。
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