貸家建付地の評価額は、自用地の価額に借地権割合・借家権割合・賃貸割合を乗じて算出される金額(=借家人の敷地に対する支配権に相当する金額)を、自用地としての価額から減額して求めます(財産基本通達26)。ここで言う賃貸割合ですが、分母の内課税時期に賃貸されている各独立部分の床面積の合計/当該家屋の各独立部分の床面積の合計の算式で求められる割合です。これに関して通達では、”賃貸されている各独立部分には、継続的に賃貸されていた各独立部分で課税時期において一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えない”と定めています。
「一時的に賃貸されていなかったと認められるもの」とは、漠然とした表現で実務執行上の混乱原因になり兼ねませんので、国税庁の質疑応答事例に次の判断基準が示されています。
①各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されていたものであること
②賃借人の退去後、速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか
③空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
④空室の期間が課税時期の前後の例えば1ヶ月程度であるなど一時的な期間であったかどうか
⑤課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか
納税者の不服理由の多くは、新たな入居者の募集を行ったが中々成約に至らなかったのだから、それに要した期間が2~3か月であれば認められるべきだと言うものです。然しながらこれに就いては、特殊事情がない限り認められる余地がありません。退去後の原状回復工事に想定外の時間が掛かった場合などは、特殊事情として認められる様です。
これに対し戸建て貸家が空室になっていた場合ですが、共同住宅と異なりシンプルに課税時期に現実に賃貸されていたかどうかで判定されますので御留意下さい。
ところで共同住宅の一部が一時的空室には当らないとして貸家や貸家建付け地の評価減が認められなかった場合に、貸付事業用小規模宅地等の特例の適用はどうなるでしょうか?これに就いては、貸家の一部が空室で有ったとしても、入居者の募集等を継続し貸付可能な状況に維持管理されて居れば、空室部分を含めた敷地全体に適用があることになっています。間違え易いので注意が必要です。
(お断り)
本記事中には、筆者私見に基づく個所がありますのでお断りして置きます。
本記事は、東京税理士会発行の東京税理士界令和1年8月号の実務研究を一部参照しています。
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