ついそこまで台風が迫っている最中、興福寺の仏像を拝観してきました。
藤原氏の氏寺として栄えた興福寺には、多くの貴重な仏像が残されて居り、国宝指定の仏像彫刻の実に15%を所有すると言われています。中でも、人を虜にする端正な顔立ちの阿修羅立像と、白鳳の貴公子と呼ばれる薬師如来仏頭は、美形の仏様の双璧として広く知られています。
昨年11月に、興福寺創建1300年記念として、東京芸大美術館で開かれた仏頭展に、従者として随行したのが「木造十二神将立像」と「板彫十二神将像」でした。十二神将とは、薬師如来を守護する武神で、薬師教を信心する者の大願に応じて、12の時間と方角を守ると言われています。今回は、1年振りの対面となりました。
「木造十二神将立像」は、何れも頭部に干支の動物を付け、誇張された形相と鍛え抜かれた肉体、そして携えた武器で相手を威圧します。典型的な鎌倉彫刻の傑作です。これに対し、「板彫十二神将像」は、厚さ僅か3cmの檜の一枚板に彫られたレリーフですが、作者(不明)の卓越した技巧と表現力が伝わる逸品です。神々は何れ劣らぬ醜男揃いですが、見栄を切った歌舞伎役者の如き軽妙な動作の中に、得も言われぬユーモアと親しみを感じさせます。肩をすぼめて左手先でポーズを取る、安底羅(あんていら)大将の強面とは大凡不釣合いに、御茶目な仕草が何とも言えません。