1月から延々と続いた確定申告業務からやっと解放された。この時期に温泉で疲れを癒すのが毎年の恒例行事だ。場所の選択に迷っていると、嫁がリゾートハワイアンズへ行こうと言う。いわき市は何度か仕事で訪れたことがあるので大凡の見当が着くが、彼のレジャー施設については全く無案内だ。常磐炭鉱の跡地開発とかフラガールの映画程度の知識しかない。何れにせよ折角のご提案ゆえ承ることにした。
岡倉天心美術館が有る五浦海岸を過ぎ、勿来(なこそ)の関に入ると福島県だ。あれだけ頻繁に通った東北だが、東日本大震災のあと全く足を踏み入れなくなった。格段の理由はないが、何とはなしに物見遊山に出掛けるのが憚られた。
3月半ば、東北の風は冷たい。8年前の大震災の夜も寒かった。電車が動かず、何時間も掛けて駐車場と化した目黒通りを歩いて家に帰ったが、細かなことは思い出せない。
リゾートハワイアンズ所有の丘陵には大規模なホテルや温浴施設が建つ。何れも中々の繁盛ぶりだ。温浴施設の中でも、銭湯の創始者と言われる伊勢余市に因んで命名された露天風呂余市の評判が高い。江戸時代の湯屋を模した300坪程の広大な浴槽では、夜半に芸者衆の影絵舞踊が催される。往時と異なり男女混浴が禁止されている今日では、無粋な背高の衝立が設けられているのが些か残念だ。
湯に浸かり上弦の月を見上げながら、今年の確定申告業務のあれこれを回顧する。例年通り複雑な不動産案件が多かった。ただイレギュラー事案にも幾つかパターンが有るので、対応に要する時間は少なくなった。海外絡みの事案も着実に増加傾向にあり、納税管理人への就任依頼が3件あった。非居住者は納税管理人を立てねば申告・納付が出来ないことをご存知ない方も居られた。中国に在る不動産の譲渡に係るご相談については、依頼者の国民性の違いを実感させられることが多かった。
確定申告のお客様にはリピーターが多いが、大変有難いことだ。思いの外納税額が少なくて済んだとか、税の還付が多く受けられたとかのお話もそうだが、税務署から問題視されるのではないかと心配したがそれが無くてほっとしたと感謝されると税理士冥利に尽きる。