この処、清水がグルメの街として人気である。マグロ・地魚・桜えび・生しらす・静岡おでん・モツ煮、何れも食欲をそそる。但し難点は、東京から遠いこと。片道で160キロ、2時間強のドライブなので、多少の体力と時間的余裕が必要となる。
店探しだが、今回はTVの食べ歩き番組を参考にした。尤も食レポの話は、当てにならないことが多い。若いお姉さんが、一口喰っただけで ”美味しいー” などと呻いても、百戦錬磨のオジサンには通用しない。美味い物をたらふく食った経験がある様には、到底思えないので。
慎重熟慮の上、今回は「かん吉の鰻」「ふるさとの蕎麦」「清水江戸銀の寿司」の三店を選んだ。流石に日帰りで巡るのは無理なので、一泊二日のグルメ旅とした。
かん吉は櫃まぶしの名店である。お品書きの最初に、櫃まぶしが出て来る鰻屋は珍しい。良い値段にも拘らず、皆さん召し上がっているのは櫃まぶし。待つこと30分、香ばしい匂いと共に膳が運ばれてきた。木製のお櫃に、葱と山葵の薬味、肝吸いに冷奴、漬物に出汁と余計なものは一切付いていない。肉厚の鰻は関西風の焼きで、身には適度の弾力があり皮もサクサクと歯触りが良い。二杯目は定石通り薬味を加えて食したが、鰻の濃厚な味と薬身の淡泊さが相俟って実に美味い。櫃まぶしと言えば、名古屋熱田の蓬莱軒と決めつけていたが、全く遜色がない。
ふるさとは割烹風の佇まいの蕎麦屋である。漁港直送の魚貝類が美味いことで知られる。やはりこの時期は桜えびのかき揚げが外せないので、嫁は天ざるを注文した。小生はおろし蕎麦。冷たい麺に大根おろしと薬味、小エビの天ぷらを載せたもので、濃口の出汁が程良く甘辛い。セットで付いた寿司も、高級なネタは使っていないが蕎麦屋とは思えぬ程の一品。つい出汁まで飲み干して、塩分の取り過ぎと嫁からお小言を頂戴する。
清水江戸銀は、文字通り築地の江戸銀から暖簾分けした寿司屋だ。場所柄マグロが美味いのは当然として、倉沢鰺や金目鯛と言った脂が乗った地魚を食べさせて呉れる。注文は無難に大将のお任せにして、最後に本日のお薦め赤むつ(のど黒)を頼んだが、コリコリした食感の白身魚で程良く甘味があり美味い。かって築地江戸銀は高級寿司屋には珍しく天ぷらを出していたが、実は職人ではなく老女将が揚げていた等と昔話に花が咲く。
写真は市郊外に在る清見寺境内の五百羅漢像である。清見寺は今川氏や徳川幕府の庇護を受けた臨済宗の名刹だが、数多くの文人墨客が訪れて歌を詠んだことでも知られる。五百羅漢尊者はお釈迦様の弟子達で、古来より多くの石像中から故人の面影を偲ばせるものを探し当て、供養とする風習がある。間もなくお盆なので、親父似の石像を探してみた。