■ 川越 いちのや

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所沢霊園での義母の三回忌法要の後、折角だから足を伸ばして川越のいちのやへ鰻を喰いに行こうと言う話になった。いちのやは天保3年創業の鰻料理の老舗だ。西麻布や神泉にも店を構えているので、ご贔屓の方も多いと思う。
冬の寒い時期に、鍋ではなく何故鰻だと無粋に思われるかも知れぬが、実は鰻は脂がのったこの時期が一番美味い。そもそも土用の丑の日に鰻を食す等は、讃岐の大先輩平賀源内が万葉集をヒントに作ったコピーに踊らされたものだ。夏痩せした鰯の如き鰻が美味かろう筈がない。

店に着いて驚嘆した。休日の昼時とは言え17組待ちである。仕方なく日経ビジネスなど捲っていると、突如中国語の大音声が響き渡る。折しも春節で、銀座や秋葉原が中国マネーの爆買いで賑わっているとのニュ―スは聞いたが、まさかこんな内陸の和食屋にまで大挙押し寄せるとは。中国語だけではない、これは確か韓国語だ。何を喋っているか分からぬが、韓流ドラマで聞き覚えがある。

孫文が日本に留学していた時、下宿の味噌や醤油味の賄い飯に辟易したと言う記事を読んだことがある。彼らは大豆の発酵臭が苦手の筈だが、鰻の蒲焼は別の様だ。絶滅危惧種などと言われ、随分値段が上がった処に中国マネーとの競合は厳しいが、美味いものを喰いたいのは万国共通の摂理なり。止むなし。

小一時間で、ふっくらしたご飯に載った鰻がやってきた。食レポは不得手なので、美味い・普通・不味いの3種類しか表現の術を知らぬが、誠に美味かった。

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