考えている以上に厳しい相続税の税務調査

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相続税の申告で税務調査が入る確率はどの程度あるのか、何時ごろ税務調査が入るのか、どの様な事案に調査が入り易いのか等は税理士ならずとも知りたい処です。今回は東京税理士会主催の研修会での講義内容や配布資料その他を基に、情報を整理して見ました。

1.申告が必要な相続の割合(R2年12月18日国税庁発表)
令和元年に亡くなられ方は138万人で、うち相続税の申告を要するものは11.5万人(全体の8.3%)です。平成27年に基礎控除の引下げが実施されていますので、当面はこの水準で推移するものと思われます。
1相続当り課税価格の平均は1.37億円で、金額構成比率は土地34%・現預金33.6%・有価証券15%の順になっています。

2.相続税の税務調査の状況(H30.12国税庁発表)
令和1事務年度に実地調査が行われた件数は1万600件です。11件に1件の割合で税務調査が入ったことになります。この内申告漏れを指摘されたのは85%で、他税目に比べると突出して高い割合です。申告漏れ課税価格の平均は33.6百万円で、その追徴税額は6.4百万円になります。
実地調査以外にも電話や出署(簡易な接触)による調査が行われます。令和元年度の簡易な接触件数は8.6千件で、この内非違及び回答等の割合は62.5%でした。このほか無申告が想定される者への書面照会や書類提出依頼も行われます。この様に相続税申告に付いてはかなりの確率で税務署のチエックが入ることがお分かり頂けると思います
海外資産関連事案(相続財産中に海外資産が有る/相続人等が非居住者であるなど)の調査が4年連続で増加しており、CRS情報や租税条約に基づく情報交換、国外送金等調書から露見するケースが多い様です。

調査が入るのは、国税局及び税務署で収集した資料情報(財産及び債務の明細書・固定資産税課税台帳など)から申告額が過少であると想定される事案や、申告義務があるにも拘らず無申告と想定される事案で、具体的には次の様なケースが該当します。
ⅰ)被相続人の収入や暮らし振りから無申告が想定される場合
ⅱ)多額の相続財産が有る場合(申告漏れ財産がないか、土地等の評価が適正か)
ⅲ)相続財産中に非上場株式が有る場合(非上場株式の評価が適正か)
ⅳ)被相続人の預金等が家族名義になっていることが想定される場合

3.税務調査の実施時期
確定申告をしてから1年又は2年を経過する年の秋に税務調査が入ることが多い様です。理由は毎年7月初めに税務職員の人事異動が行われるためと思われます。これを過ぎて新たに税務調査が入ることは殆んどありません。

4.申告漏れ相続財産の内訳とその原因
現預・有価証券・土地等億円・建物の順です。主な否認原因は次の通りです。
①現預金3
家族名義借り預金は例外なく調査対象になります。被相続人からの生前贈与も同様です。葬儀費用支払の為、相続発生の前後に被相続人口座から引出した手許現金も申告漏れになるケースが多い様です。
②有価証券
家族名義借り株式や投資信託の申告漏れ、非上場株式の評価方式や評価計算の誤りが主な原因です。
③土地等
小規模宅地等の特例や地積規模の大きな宅地評価の適用誤り、国内の遠隔地にある土地等や海外不動産の申告漏れが主な原因です。
④建物
固定資産税評価額に倍率1を乗じるだけの簡単な計算なので申告漏れは多くありません。但し、固定資産税評価額に反映されていない費用支出がある場合は注意が必要です。例えば増改築費用などは、固定産税評価額に反映されないものが多いため、預金等の調査の際に指摘されることがあります。

 
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