相続法制の改正で配偶者の相続分その他の重要事項が変更される可能性があります

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法務大臣の諮問機関である法制審議会で、民法(相続関係)の改正作業が進められています。早ければ平成29年中に改正案が提出される可能性があります。民法が変われば、相続税法も当然変わりますので、どの様な変更が検討されているか、その影響は如何ほどのものかを調べてみました。今後の相続税対策にも関係する重要事項ですので、引き続きフォローしたいと思います。
なお中間試案の原文をご覧になりたい方は、法務省のウエブサイトをご参照下さい。(http://www.moj.go.jp/shingi1/housei02_00294.html) 
<検討事項>
①配偶者の居住権を保護するための方策
②配偶者の相続分に関する見直し
③自筆遺言制度の見直し
④遺留分制度の見直し
⑤相続人以外の者による療養看護や財産形成での貢献を考慮するための方策
⑥寄与分制度の見直し
⑦遺産分割における相続人の担保責任

.配偶者の居住権を保護するための方策
配偶者の一方が死亡した場合に、他方の残された配偶者が住み慣れた居住建物を離れて新たな生活を始めるのは、経済的・精神的に大きな負担となります。この為残された配偶者の居住権を保護しつつ、生活のための一定の財産を確保する方策が必要との考えに立脚しています。
これに就いては、配偶者が遺産分割時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、終身又は遺産分割終了時から一定期間、配偶者にその建物の使用を認める権利(長期居住権)の新設等が検討されています。相続財産として課税対象になりますが、建物所有権に比べれると評価額は低くなります。

2.配偶者の相続分に関する見直し
遺産分割において、遺産の形成に対する配偶者の貢献の有無及び程度をより実質的に考慮し、その貢献の程度に応じて配偶者の取得額が変わるべきだとの考えに立脚しています。例えば老後に再婚した場合などは、被相続人の財産形成への寄与度を低く見ることになります。
これに就いては、婚姻後の資産の増加額のうち一定部分を配偶者固有の寄与分とする制度や、婚姻成立後一定期間(20年)が経過している場合は夫婦に法定相続分の変更の選択(現行の法定相続割合よりも配偶者取り分を多くする)を認める案が検討されています。

3.自筆遺言制度の見直し
現行の遺言制度(遺言の方式・遺言能力・遺言事項など)、就中自筆証書遺言については厳格な要件が定められて居り、高齢者でも全て自筆しなければならず負担が大きいとか、遺言内容の加除訂正が大変だと言った不都合が指摘されています。
これに就いては、不動産の所在など財産の特定に関する事項については自筆でなくても良いことにする、加除訂正は変更箇所への署名及び捺印ではなく署名又は捺印の何れかで足りるものとするとの変更案が検討されています。この他にも、遺言事項及び遺言の効力に関する見直しや、自筆証書遺言保管制度の創設などが検討されています。

4.遺留分制度の見直し
現行民法の遺留分に関する規定は、受遺者又は受贈者が相続人であるかそれ以外の第三者であるかの区分がされて居らず、ために条文と判例の間に齟齬が生じています。例えば民法1030条には相続開始前1年以内の贈与だけが遺留分の算定基礎になると明記されていますが、最高裁では受贈者が相続人の場合は時期的な期限を設けないとの判例が出ています。民法1034条の減殺割合の計算に就いても同様の齟齬が存在します。遺留分の趣旨・目的に就いては、遺族の生活保障や遺産形成への貢献に関する潜在的持分の精算と言う当初の意図が社会の実態にそぐわなくなっているとの指摘があります。
これに就いては、法的性質の見直しと算定方法の見直しが行われています。法的性質の見直しですが、遺留分を侵害された者については従来同様に遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求を認めています。一方、請求を受けた受遺者又は受贈者は(3か月以内であれば)金銭支払いに代えて目的財産の引渡しを主張することが可能としています。算定方法の見直しですが、相続人に対する請求と第三者に対する請求とに区分しています。基本は現在と同じ計算式ですが、特別受益額となる贈与の範囲を、相続人に対するものは5年以内に限る(又は期間制限なし)、第三者に対するものは1年以内に限ると変更しています。

6.寄与分制度の見直し
被相続人に複数の子がいる場合、一部の子のみが療養看護を行うことが少なくありません。ところが現行の寄与分制度では、その貢献度が寄与分として認められ遺産分割の結果に反映されることは難しいのが実情です。
これに就いては、今回の中間試案から削除されました。寄与分の認定を巡って相続人間の関係が悪化することへの懸念や、寄与の程度を審理することの困難が理由に挙げられていますが、必要は認めつつも実務の煩瑣を考慮して検討を避けたとの印象が拭いきれません。

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