アメリカに所有する不動産に係る米国所得税の申告について

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富裕層の資産運用や節税のための米国不動産投資が人気です。日本の居住者がアメリカに不動産を所有し賃貸若しくは譲渡をした場合は、日米両国に於いて申告納税義務が発生します。二重課税が生じると、外国税額控除の適用を受けなければなりません。アメリカでの申告実務は米国公認会計士やEA(米国税理士)に依頼するとしても、非居住者の不動産投資に対する米国での課税の仕組みは理解して置く必要があります。そこで内国歳入庁(IRS)のHPや出版物、お客様の実際の申告書(Form1040-NR)等を基に、関連情報をupdateしましたのでご参照下さい。

1.米国での申告statusと課税所得の範囲
納税者は米国籍の有無に応じ,米国市民と外国人(Alien)とに分けられます。米国籍であれば海外に居住している者であっても米国市民になります。全世界所得が課税対象です。
外国人はグリーンカードテスト又は実質滞在テストにより、米国居住者と米国非居住者(Non-Resident Alien)に区分されます。米国居住者の課税対象は米国市民と同じですが、米国非居住者は国内源泉所得のみが課税対象です。日本国籍で日本に居住している者の申告statusは、原則として米国非居住者になります。

2.米国非居住者の課税対象所得
課税対象となる国内源泉所得は、「米国ビジネスに関連する所得(USIEC所得)」と「期間対応する所得(FDAP所得)」に区分されます。
USIEC所得には、米国でのビジネスに関連する所得/米国での役務提供による所得/全ての米国不動産の売却損益などが該当します。総合課税所得として非居住者所得税申告書(Form1040-NR)により申告し、米国市民及び米国居住者と同じ累進税率が適用されます。米国不動産の賃貸所得は次のFDAP所得に該当しますが、USIEC所得を選択することも可能です。
FDAP所得は固定的・確定的な期間に対応する所得で、受取配当・受取利息・賃貸所得・ロイヤリティ・年金などが該当します。不動産以外のパテントや著作権等の売却損益もFDAP所得です。所得控除の適用は有りません。収入金額に対して30%の源泉徴収が行われ、課税関係が終了します。日米租税条約に別途定めがある場合は、その軽減税率を適用することが出来ます。因みに受取利息及びロイヤリティは零%、受取配当は10%です。源泉徴収の過誤納がある場合は、Form1040-NRを提出することにより還付を受けることが出来ます。

3.所得控除と適用税率
米国居住者は標準控除と個別控除(Itemized deduction)の何れか有利な方を選択できますが、米国非居住者には標準控除の適用がありません。個別控除のみで、かつ支払利子・医療費・固定資産税の控除などは認められず、投資関連経費や慈善寄付金控除その他の控除だけです。人的控除(exemptions)は納税者(基礎)控除のみで、妻子帯同の場合でも配偶者控除や扶養控除の適用がありません。また16カ月超の申告遅延に就いては基礎控除も認められない場合があります。
USIEC所得に適用される累進税率は、10%から37%(独身者は50万ドル超の部分、夫婦別申告者は30万ドル超の部分)迄の7段階刻みです。既婚者については一般に夫婦合算申告を選択する方が有利ですが、非居住者外国人には認められません。キャピタルゲインには、別途定める税率が適用されます。

4.不動産賃貸所得の計算
基本はFDAP所得なので、賃料支払いの際に30%の源泉徴収が行われます。USIEC所得課税(ネットレント課税方式)を選択した場合は源泉徴収がありませんので、翌年4月乃至6月に申告書を提出することが必要です。連邦税と異なり州税の多くはネットレント課税方式のみです。
賃料及びロイヤルティ収入から、清掃及び維持管理費・保険料・マネジメント手数料・モーゲージ支払利息・修繕費・租税公課・減価償却費・その他の経費を差引いた金額が、不動産賃貸所得(ネットレント純利益)になります。住宅不動産の減価償却費は27.5年の定額法で計算します。補助的計算明細書(Schedule E)を作成して申告書に添付します。損失が発生した場合は受動的活動(Passive Activity)に因る損失になりますので、他の不動産賃貸所得や不動産売却益との相殺は可能ですが、事業所得や利息配当等との損益通算は原則として出来ません。翌年以降の繰越控除は認められています。

5.不動産売却損益の計算
譲渡価額から、売却物件の簿価(購入価額に購入手数料や改良費等を加算した金額)及び仲介手数料その他の譲渡費用を差引いた金額が不動産売却損益になります。賃貸収入を得ていた物件を売却した場合は、賃貸所得の計算上控除した減価償却費累計額を簿価から控除しなければなりません。日本の譲渡所得計算では、自己使用期間と賃貸期間の何れに付いても減価償却費相当額を控除して取得費を求めますので、この辺りの違いを充分理解する必要があります。キャピタルゲイン計算明細書(Schedule D)を作成して申告書に添付します。
所有期間が1年超の不動産の譲渡益は長期キャピタルゲインになります。売却益のうち通常税率37%が適用される部分は20%、25%以上37%未満が適用される部分は15%、25%未満が適用される部分は0%のキャピタルゲイン税率が適用されます。なお売却益のうち簿価から控除した減価償却費に対応する部分(un-recapture)には、25%の税率が適用されます。通常税率の限界税率がキャピタルゲイン税率よりも低い場合は、低い方の税率が適用されます。
居住用不動産を売却した場合、最高25万ドル(夫婦合算申告50万ドル)の特別控除を受けることが出来ます。居住用不動産の要件は、売却前5年以内に2年以上自己の居住の用に供していることです。2年間の居住要件を満たしていても、賃貸など非適格期間がある場合は対応期間の非課税が認められません。
非居住者が米国内の不動産を譲渡した場合、15%の連邦所得税が源泉徴収されます。この他に州税が源泉徴収されることがあります。売買価額が30万ドル以下で買手の購入目的が主たる住居であれば、源泉徴収の対象外になります。売買価額のバランス等で明らかに譲渡益が発生しない場合は、IRSから源泉徴収税の減免証明(Withholding Certificate)を取り付けることに依り払戻しを受けることが出来ます。

6.米国地方税
個人所得税は連邦政府だけでなく、州政府及び一部の市政府若しくは郡政府に依り課税される場合があります。地方政府の多くは累進税率を採用していますが、単一税率の処もあります。一般に連邦税よりは税率が低く抑えられています。地方により課税所得の範囲や、居住者・非居住者の定義などがまちまちですので、全体を正確に把握するのは困難です。エリアの実務に精通した地元のCPAやEAの起用をお薦めします。費用は日本の税理士報酬並み若しくは少し高い程度です。

7.申告及び納付
米国非居住者はUSIEC所得がある場合、若しくはFDAP所得の源泉徴収税額に過不足がある場合は、非居住者所得税申告書を提出します。提出期限は、源泉徴収対象給与所得や事業所等を有する場合は翌年4月15日、それ以外は翌年6月15日です。申告期限までに納税をしなければなりません。
期限までに申告が出来ない場合は、申告期限延長申請書(Form4868)をIRSに申請することで10月15日までの延長が認められます。但し納税に関する延長では有りませんので,申告期限までに未払税額を納める必要があります。
前年に一定金額以上の所得税納付があった場合は、居住者と同様に予定納税を求められることがあります。

 
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