ご主人が亡くなられた場合、自宅を含む遺産総額が1.6億円以下なら全て奥様が相続されることをお薦めします

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老後2千万円問題が世間を騒がせています。政府は的外れの議論だとして火消しに躍起になっていますが、これが核心を突いた問題提起であることは誰の眼にも明らかです。
大手企業を退職された方が受取る年金の多くが、基礎年金・厚生年金・企業年金の3層構造になっています。厚生年金と略同額の企業年金が終身支給されますので、何とか現役時代と遜色ない生活を送ることができます。但し預貯金の取崩しは避けられません。
ご主人が亡くなられた後の年金はどうなるでしょうか?企業年金は打ち切られ、夫の老齢厚生年金の4分の3が遺族厚生年金として支給(3通りのパターン)されます。余談ですが、遺族年金については所得税も相続税も掛りません。ご自身の基礎年金と合せた収入は、従来の半分以下になります。2人が1人になっても然程出費が減る訳ではありませんので、資金繰りは一転します。自分で身の始末が出来なくなった後の、療養・介護も考えなければなりません。子供に迷惑は掛けられないので有料介護施設等へ入所するにしても、高額な入居一時金や毎月の利用料支払いで預貯金は加速度的に目減りします
自宅不動産は必ず奥様が相続する必要があります。老人が家を借りるのは容易ではありません。手許不用意で将来自宅を処分する場合でも、奥様が居住している不動産であれば3千万円特別控除が使えます。配偶者居住権制度を使うと自宅売却が難しくなります。
話を相続での得失に戻します。ご主人の遺産が相続税評価額で1.6億円以下なら、全て奥様が相続されることをお薦めします。理由は老後資金の問題の他に、相続税申告で「居住用小規模宅地等の特例」と「配偶者に対する相続税額の軽減規定」を適用すれば納付税額がゼロになるためです。副次効果として、配偶者の税額軽減に拠り相続税支払いがない申告書については、課税庁のチエックが自ずと緩くなります。
「居住用小規模宅地等の特例」を使えば自宅敷地の評価を80%下げることが出来ます。この特例は相続人の誰が取得するかに依り適用可否が分れますが、配偶者が取得する場合は例外なく認められます。この結果、相続財産の課税価格の合計額が1億6千万円以下に収まれば、次は「配偶者に対する相続税額の軽減規定」の活用です。配偶者の相続割合が法定相続割合(妻と子の場合は2分の1)以下であるか、若しくは法定相続割合を超えても取得価額が1億6千万円以下であれば妻の相続税支払いは有りません。
これ等の規定の適用を受けるためには、相続税の期限内申告書の提出期限までに自宅敷地が分割され(申告期限後3年以内の分割見込書に就いては省略)、且つ申告書に適用を受ける旨及び計算の明細を記載して必要書類を添付しなければなりません。
前段の要件ですが、相続人間で分割協議が纏まらず期限内申告期限では自宅敷地が未分割になる可能性があります。これを防ぐには遺言書の作成が有効です。先般の相続法改正で、”法務局に於ける遺言書の保管制度”が創設されましたので、これを利用すれば良いと思います。
後段の要件ですが、”相続税の申告をすれば適用が受けられる優遇措置”なので、申告をしなければ適用が受けられません。最終的な相続税の支払がない⇒申告の義務がないと誤った解釈をされ、後で気が付いて対応に苦慮される方も居られますので呉々も御留意下さい。
奥様が全ての財産を相続した場合、他の相続人から現金支払いによる遺留分減殺請求が起こされる可能性があります。これに備えて奥様を受取人とする一時払い終身保険(生命保険金の非課税限度額相当)に加入して置くのも一案です。

奥様が全ての遺産を取得すると、第二次相続を合せたトータル税負担が増えることがあります。これは奥様が相当の遺産を残された場合の話です。詳細は別稿の「配偶者がご主人の全ての遺産を取得すると、第二次相続を合せた税負担が不利になる場合とは」をご参照下さい。

 
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