相続しても空き家になる実家は親の生前中に売却した方が有利

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人口の減少や核家族化に伴い、空き家問題が深刻化しつつあります。これは地方に限らず都市部でも同様です。2014年11月に空き家対策法(空き家等対策に関する特別措置法)が制定されました。中味は、行政府による立入調査権や特定空き家の除却権限・固定資産税の加重措置などが中心で、民間に鞭で自己解決を迫ると言う如何にもお役人らしい発想です。

 

一方で相続税の課税強化により、都市部では猫の額ほどの居住用不動産を持つ家庭でさえ、相続税対策を余儀なくされています。ここで登場するのが、小規模居住用宅地等の特例です。”親の土地は時価1億円だが、路線価で計算するので相続税評価額はこの8割程度。更に、100坪以内なら8割評価減が受けられるので課税価格は16百万円に過ぎない。他に多少の金融資産が有ったとしても然程の相続税にはならない。” この様にお考えの方が多いと思いますが、果たしてそう上手く行くでしょうか?

 

大雑把にいえば、特例の対象になる相続人は、①親と同居していた親族が引き続きその宅地等に住み続ける場合、②親と同居していた他の親族がいない場合で、別居親族(相続開始前3年以内に本人及び配偶者の持ち家に居住していない者に限る)が継続所有する場合、に限られます。”相続が発生する頃合いを見図って、親との同居を始める、或いは自宅マンションを売却して借家に移れば適用要件を満たすことが出来る。” 本当にその様なことが可能でしょうか?

 

結局の処、特例が受けられずに評価額80百万円に対して課税されるケースが少なくないと思います。ところが問題はこれだけで済みません。空き家を其の儘放置することは不具合ですから、早晩売却を余儀なくされます。そうなると新たに分離課税の譲渡所得税が発生します。相続により取得した不動産は、被相続人の取得価額を引き継ぎますので、代々承継された不動産ですと相当の含み益がある可能性があります。”相続税を課税した上に、更に所得税を課税するとは怪しからん。2重課税だ。” とご不満でしょうが、課税当局の説明は ”資産税と所得税では、課税体系が異なるため2重受課税には当たらない” と言うものです。

 

それでは、相続後に空き家を売却するのではなく、相続発生前に親が売却すればどうでしょうか?この場合は、3千万円の特別控除に加えて軽課税率(6千万円以下は20.315%⇒14.21%)の適用が受けられます。デメリットとしては、宅地等であれば相続税評価額が時価の8割程度に抑えられるのに対し、現預金だと満額評価になる点です。尤も、売却資金で転売が容易な都心のマンションに買い替える等すれば、この問題は無くなります。計算比較上は、相続税相当額の取得費算入もありませんのでデメリットになります。

前提の置き方にも拠りますが、トータルでの税負担は生前売却の方が2-3割程度少なくなるとの試算結果が出ました。古い物件ですと、取得費が分からないため概算取得費控除(売却価額の5%を取得費と見做す)で譲渡所得を計算することが有ると思いますが、その様なケースは更に有利になります。

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