平成30年の民法改正で創設された配偶者居住権を利用した節税策

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平成30年の民法(相続法)改正に関する小職の解説記事「平成30年の民法改正に依る重要な変更点-配偶者居住権/特別寄与料/その他」で、”創設された配偶者居住権(長期)を利用した租税回避行為が増加する可能性があり、今後の成り行きが注目される” と書きました。第一次相続で妻が取得した配偶者居住権に就いては、第二次相続(配偶者の死亡)が生じると第一次相続の負担付所有権者が配偶者居住権相当の経済緒的利益を無償で手に入れることになります。当然これに対しては相続税又は所得税の見做し課税が行われる筈と考えていましたが、案に相違して令和1年7月に発遣された相続税改正通達に拠れば、”配偶者が死亡した場合は配偶者居住権に係る相続税や所得税の課税関係が生じない” ことになりました。そうなると配偶者の居住権確保と言う制度本来の趣旨を逸脱した節税策が横行するのではと考えた次第です。

先日発行の税務通信No3577号に、「民法改正と令和元年税制改正を踏まえた実務の留意点」配偶者居住権の目的外利用との副題で同様主旨の節税策が掲載されていましたのでご紹介します。遺言連続信託に代わる利用法で、スキームはこうです。
第一次相続で残された妻に配偶者居住権とその敷地利用権を相続させる。配偶者居住権が設定された建物所有権と敷地利用権が設定された宅地所有権は子に相続させる。この場合、母親の敷地利用権は勿論のこと、子が同居していれば子の宅地所有権に就いても小規模宅地等の特例の適用が受けられる可能性がある。
母親がなくなると配偶者居住権と敷地利用権が消滅するので、子の所有権はこれ等の負担がない一般の所有権となる。この経済的利益の無償移転に就いては、相続税基本通達9-13の2(配偶者居住権が合意等により消滅した場合)によりその他の経済的利益は無かったものとされる。第一次相続で配偶者の相続税額軽減規定により母親に相続税が課せられなかった場合は、実質的に子が第二次相続でこのメリットを享受することになる。

受益者連続信託に代わる利用法として紹介されていますが、特に信託契約である必要は有りません。通常の遺産分割協議や遺贈でも応用可能です。これに関して2点補足説明致します。
先ず第一次相続で子に相続税支払いが発生する場合です。単純に母親が通常の所有権として相続すれば、配偶者の税額軽減規定を使い相続税支払なしで済むことが多い為、却って損だと早合点される方が居られるかも知れません。そうでは有りません。上記説明の通り、第二次相続で配偶者居住権相当分が課税対象財産から除外されますので、トータルの税負担では有利になります。
次に節税の論点からは外れますが、母親の居住用財産に関する権利が著しく制約されることになります。寧ろこちらの方が重要かも知れません。配偶者居住権は居住用財産を使用貸借する権利を保障されたもので所有権ではありませんから、後々何等かの事情で資金調達が必要になったとしても、母親が自宅を売却することは出来ません。親子関係やお手持ちの金融資産の多寡にも拠るでしょうが、老後の生活設計での大きなリスクになります。

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