中小法人の税負担を軽くする株主構成と配当方針

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資本金3百万円の不動産サブリース会社です。株主は、私と妻そして母の3人で、各3分の1を所有しています。全員会社の役員に就任しています。非上場会社からの配当金については、所得税・住民税とも総合課税が原則だそうですが、そうすると他に多額の不動産所得や給与所得がある私と母については、税負担が大きくなってしまいます。そこで、会社からの給与収入しかない妻の出資比率を上げた方が、有利ではないかと思いますが如何でしょうか?配当金額の決め方と併せてアドバイスをお願いします。

 

非上場株式の配当金については、所得税・住民税ともに総合課税です。従って累進税率が適用される所得税については、高額所得者ほど負担が重くなります。一方、総合課税の配当所得については配当控除(所得税10%・住民税2.8%又は1.4%)を受けることができます。配当所得に対する所得税から引切れなかった配当控除は、他の所得に対する所得税から差引くことが出来ますので、所得金額の少ない株主はこれを上手く利用するのが得策です。そこで奥様の出資比率を上げては如何でしょうか。調整方法としては、増資又は親族間の株式譲渡の何れかになりますが、後者の方が簡単です。御主人とお母様に分離課税の株式譲渡益が発生しますので、内部留保が多くならない間に実行するのが宜しいかと思います。

 

この処、同じ様なご相談が増えています。単に個人事業者に対する所得税・住民税等の税率と、法人の実効税率を比較するのではなく、利益剰余金を配当して個人に取り込んだ後のトータル税負担を考えて、法人成りの得失を考えるのが理に適っています。
それでは 以下の設例を用いてご説明します。細かな所得控除や、源泉徴収税額等の計算は省略します。健康保険の被扶養者収入金額要件との関連は、別稿「非上場株式の配当の確定申告と健康保険被扶養者要件への影響」を御参照下さい。

<設例>
各株主への配当金を100万円とします。ご相談者はこの他に不動産所得や給与所得が900万円あります。そうすると100万円の配当金に対する所得税は33万円(限界税率33%)、住民税は10万円(一律10%)です。これに対する配当控除が、所得税10万円(10%)、住民税2.8万円(2.8%)ありますので、配当所得のネット税負担額は30.2万円になります。
次に奥様ですが、他の所得は給与所得108万円(給与収入180万円ー給与所得控除72万円)のみです。100万円の配当金に対する所得税は5万円(限界税率5%)、住民税は10万円(一律10%)です。これに対する配当控除が、所得税5万円(100万円×5%≦100万円×10%)、住民税2.8万円ありますので、配当所得のネット税負担は7.2万円になります。ところが、配当控除で引き切れなかった5万円で、その他の所得税を差引くことが出来ますので、所得税については納付税額がゼロになります。
 

対策1 1株主当りの年間配当金額を10万円以下に抑えて、確定申告を要しない配当所得の特例を利用する。

上記設例ですと、確定申告を行った場合のご主人の所得税限界税率は33%になります。これに対し、非上場株式の配当時に源泉徴収される所得税及び復興所得税は20.42%(住民税の特別徴収はない)ですから、10万円以下に抑えて確定申告不要を選択した方が有利です。なお住民税については非上場株式配当の確定申告不要制度がありません。

対策2 総所得金額に適用される限界税率が低い株主の出資比率を上げる。

設例でお分かりの様に、同じ100万円の配当なのに、御主人と奥様では税負担が極端に異なります。特に奥様については、配当所得に対する税負担がないことに加えて、給与所得に対する税負担もなくなっています。限界税率5%が適用されるのは194.9万円までですから、これをメルクマールにして、奥様の役員報酬や配当金額を決めれば良いと思います。

対策3 出資比率調整のための親族間非上場株式の譲渡価額

親族間の非上場株式の譲渡価額ですが、基本は純資産価額方式で算定することで差し支えないと思います。
特殊関係者間取引なので低額譲渡の議論があったとしても、個人間の売買ですから売主に見做し譲渡益課税は生じません。買主に時価と実際支払額との差額に対する贈与税の認定課税の可能性は有りますが、B/Sを拝見する限り然程の金額にはならないため、贈与税の基礎控除範囲内に収まると思います

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