不動産賃貸会社の設立による消費税還付策に関するご相談

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不動産の賃貸を行うための新会社を設立して、賃貸マンションやアパートの建築に要した消費税の還付を図る事例があると貴事務所のHPに載っていましたが、差支えない範囲で仕組みを教えて頂けますでしょうか。不動産会社だけでなく一般の事業会社にも応用できますか?
消費税は仕組みが簡単な税目ですが計算が煩瑣であるため、零細事業者の事務負担を考慮して納税義務の免除規定や簡易課税制度が設けられています。ところがこうした制度を利用し、本来の趣旨から外れた節税策を考える事業者やタックスファームがあり、規制する課税当局との間で鼬ごっこの様相を呈している様です。

節税策の仕組みは至って簡単で、先ずX1年に不動産賃貸業とその他の事業を併営する法人を設立します。初年度に、その他の事業で1千万円超の課税取引を行います。X2年とX3年の課税取引は意図的に1千万円以下に抑えます。その結果、X3年は課税事業者、X4年とX5年は免税事業者になります。
ここまで言えばもうお分かりですね。賃貸不動産の竣工・引渡し(仕入れ等)をX3年末に合せれば、課税事業者ですから仕入税額控除により仕入れ等に要した消費税全額の還付が受けられます。なお不動産賃貸は、X4年初から開始します。 

ところで、①課税事業者が調整対象固定資産の課税仕入れ等を行い、②且つ比例配分法により仕入れ税額控除を計算した場合に、③第3年度の課税期間における通算課税売上割合が仕入れ等の課税期間における課税売上割合に対し著しく変動した場合には、第3年度(本例ではX5年が第3年度に当る)の課税期間において仕入れ控除税額の調整が必要になります。課税仕入れを行った課税期間の課税売上割合のみで税額控除を完結させると、その後の利用実態を反映しないことがあるためで、これ自体は合理的な課税逃れ封じかと思います。簡易課税制度についても、同様の節税策に利用されることがあるため規制措置がとられています。
ところで、本例ではX5年は免税事業者ですので仕入れ控除税額の調整の必要がありません。従って法令を遵守した上で節税が図れます。

平成22年の税制改正で、本来は免税事業者なのに「課税事業者選択届出書」を提出することにより消費税の還付を受けている事案に対して、「課税事業者選択不適用届出書」並びに「簡易課税制度選択届出書」の提出制限措置が採られました。
上記設例は、本則通り(基準期間の課税上高が1千万超)に税額控除を受けている訳ですから、この制限は受けません。

この種の節税行為に対しては、税務当局が厳しく対応するだろうとお考えかも知れませんが、納税者が税法通りに処理している限り、当局としては否認する術がないのが実情です。消費税率10%への再引き上げの是非が議論されていますが、益税対策も含めた制度の全体設計見直しの時期に来ている様です。

(注)平成28年度税制改正で、「高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例制度(法第12条の4)」の創設と「簡易課税制度に関する一部改正(法第37条③)」が行われました。この結果、冒頭の還付策では調整対象固定資産の仕入控除税額の調整が回避できなくなります。この詳細と対応策については、関連記事 ”賃貸マンションの建設に伴う消費税還付のご相談”をご参照下さい。

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