上場株式配当の総合課税による確定申告に付いてのご相談

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75歳の年金生活者です。年収は公的年金が300万円、上場株式の配当が60万円と言った処です。上場株式配当については、これまで源泉分離課税で何もせずに済ませて来ました。先生の記事を拝見し、総合課税を選択して確定申告をしようと思いますが、配当控除で所得税が還付されても住民税や国民健康保険料・介護保険料の負担が増えると却って不利になる可能性があります。どう考えれば宜しいでしょうか?

 

平成29年度の税制改正で、上場株式配当に対する個人住民税の課税方式についての当局見解が明確化(実質は取扱い変更)されました。貴方の場合は、現在適用されている限界所得税率が5%ですので、総合課税で所得税の確定申告をした方が有利になります。なおご懸念の住民税や国民健康保険料・介護保険料の負担増ですが、所得税の確定申告書とは別途に住民税申告書を提出し、上場株式配当の課税方法として源泉分離課税(=申告不要制度)を選択すればこれ等の不都合が回避できます。これが重要ですのでご留意下さい。

上場株式配当について、源泉分離課税(申告不要)と確定申告の何れを選択するかは、源泉徴収特定口座に付いては口座毎・その他については1回に支払いを受ける毎に選択が可能です。確定申告をする場合、更に総合課税又は申告分離課税の何れかを選択することが必要ですが(一部の配当を総合課税、残りを申告分離課税にすることはできない)、ご質問の主旨より後者の説明は割愛します。
申告不要と総合課税による確定申告の何れが有利かは、所得税・住民税・社会保険料の負担をシミュレーションして比較検討するのが一般的でした。上場株式配当には15%の所得税(他に0.315%の復興特別所得税)と5%の住民税が源泉徴収されます。通常は源泉分離課税(=申告不要制度)で、課税関係が終結します。一方、総合課税による確定申告を選択すると、所得税で10%(所得1千万円超は5%)住民税で2.8%(同1.4%)の配当控除が受けられます。例えば課税所得500万円の方であれば限界所得税率は20%ですから、配当控除差引き後の所得税率(特別税含む)は10.21%になります。そうすると15.21%の源泉分離課税よりも総合課税の方が有利です。もし課税所得が1千万円であれば、配当控除差引き後の所得税率は23.483%に上がりますので、逆に源泉分離課税の方が有利になります。
次に住民税ですが、所得金額の多寡に拘らず一律10%の税率が適用されます。一方配当控除は2.8%(又は1.4%)ですので、総合課税を選択すると不利になります。国民健康保険料と介護保険料の賦課基準額には配当所得が含まれますので、同様に総合課税を選択すると不利です。
従来は一つの目安として、国民健康保険加入者については課税所得が695万円以下であれば総合課税の選択が有利、これを超えれば源泉分離課税の選択が有利と考えられて来ました。ところが平成29年分所得税の確定申告からこのロジックが覆ることになります。

平成29年度税制改正大綱に、さりげなく短いコメントが掲載されました。
上場株式等に係る配当所得等について、市区町村が納税義務者の意志等を勘案し、所得税と異なる課税方式により個人住民税を課することができることを明確化する。”
地方税法第45条の2には、その年1月1日現在で市区町村に住所を有する者は3月15日までに前年所得に係る個人住民税申告書を提出しなければならないと定められています。但し第45条の3により、所得税の確定申告書を提出した者は同日に個人住民税の申告書を提出したものと見做されますので、申告の必要がありません。この場合、所得税確定申告書に記載された総所得金額ほかに関する事項は、住民税の申告書にも記載されたものと見做されますので、上場株式配当に付いても所得税と同じ課税方式が住民税計算に適用されていた訳です。今回の改正で、納税者が異なる課税方式を選択した場合は、これが認められることが明らかにされました。有体に言えば、一部の国保加入者はこれまで余分な保険料を払わされていたことになります。

平成29年分の申告からは、配当控除差引き後の所得税率と源泉徴収所得税率を比較して有利な課税方式を選択することになります。所得控除の合計額が総所得金額を上回るなど、一部の例外ケースを除けば、簡単に判定ができます。
住民税に関する具体的手続きですが、所得税確定申告書とは別途に市区町村に対し納税通知書の発送日(概ね6月上旬)までに、”上場株式配当については住民税と所得税で異なる課税方式を選択する” 旨を記載した住民税申告書を提出します。なお上場株式等の譲渡所得についても、同様の目的で課税方式選択欄が新たに設けられました。為念。

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