遺産分割は相続税だけでなく事後の不動産売却に係る所得税等の負担も考慮する必要がある

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昨年末に父が亡くなりました。相続人は母と娘2人です。主な相続財産は都内に在る普通借地権(相続税評価額80百万円)と銀行預金その他(7百万円)で、普通借地権は60坪と30坪に分けられ夫々両親と妹家族の居住用家屋が建っています。なお両親世帯と妹世帯は、生計を一にして居りません。私ども家族は別所の賃貸マンションで暮らしています。申告期限が迫っていますので、第二次相続も視野に入れた適切な分割案のアドバイスをお願いします。なお父は生前私に、60坪の普通借地権は長女のお前に相続させると言ったことがあります。

 

このケースは遺産総額が基礎控除額を上回るため、必ず期限までに申告・納付を行わなければなりません。申告期限までに相続財産が未分割ですと、配偶者の相続税額の軽減措置や小規模宅地等の特例の適用が受けられませんので、本件の場合は約5百万円の相続税を支払う必要があります。この内半分が母の負担ですので、金融資産残高を考えれば少々キツイのではないでしょうか。

やはり申告期限内に分割協議を纏めるのが賢明です。
先ず、相続財産を全て母が相続することが考えられます。配偶者については、申告期限内に分割されれば160百万円まで相続税が掛りませんので、第一次相続での納付税額はありません。第二次相続ですが、長女・次女共に所謂家なき子に該当することになりますので、60坪の普通借地権については特例の適用が受けられます。30坪の普通借地権は、両親家族と次女家族が生計非同一なので、対象宅地等に該当しません。この結果第二次相続の納付税額は1百万円弱になります。
相続税以上に悩ましいのが、相続した不動産を売却した場合の所得税及び住民税の負担です。母は未だ75才と若く、金融資産残高を考えれば老後資金捻出のために不動産を売却する可能性があります。ところがこの普通借地権は、旧借地借家法に拠り長期間に亙り自然発生的に生じたものなので取得費が分かりません。そうすると概算取得費控除(売却金額の5%を取得費と見做す)の規定を使って、分離長期譲渡所得を計算するしかないでしょう。また居住用家屋に係る3千万円特別控除と軽課税率の優遇措置は、親の居住用不動産にしか適用が有りません。若し母が老後資金捻出の為に売却した場合には、11百万円もの税負担が生じます。母が全て相続する分割案は、トータルでの税負担が重くなる場合があるため、慎重に考えた方が良さそうです。

これ以外の分割として何通りかの類型が考えられますが、一案として、親の居住用不動産は母と長女が各持分2分の1で共有取得する(母親が引続き居住する)、次女家族の居住用不動産は次女が取得する、その他の相続財産・債務は母が取得・承継するのはどうでしょうか。配偶者である母は、無条件に小規模宅地等の特例が適用されますが、長女については適用がありません。次女の居住用不動産は、既述の通り特例対象外の宅地です。これで第一次相続の納付税額を計算しますと2百万円弱になります。第二次相続では、長女が家なき子に該当するため、特例が適用されます。次女には適用がありません。この結果、第二次相続の課税価格合計が基礎控除額以下に収まりますので、納付税額はありません。
一方不動産の売却に係る所得税及び住民税負担ですが、母親の共有持分と次女に就いては、3千万円特別控除と軽課税率の適用が受けられます。長女の共有持分には適用がありません。この結果、所得税及び住民税の総額は約7百万円になります。トータルでの税負担が比較的軽く済むことがお分かり頂けると思います。

親の居住用不動産を長女が全て取得した場合はどうでしょうか?第一次・第二次での相続税負担や、不動産売却に係る所得税・住民税の負担が格段に重くなります。然しながらそもそも税効果以前の問題として、この内容で遺産分割協議が纏まるかどうかが分りません。相続人間でどの様な話し合いになっているのか定かではありませんが、老後の生活資金調達原資のみならず当該家屋に引続き居住するための法的根拠を失うことにもなりかねないので、母としては不安だと思います。

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